在宅のがんの療養を支える訪問看護の役割とは

こんにちは。タツミ訪問看護ステーション長津田の古藤です。

本日はがん患者の訪問看護についてお話ししたいと思います。

厚生労働省が公開している令和3年(2021年)の人口動態統計によると、2021年に死亡した日本人は143万9,809人となっています。

死因で一番多いのは悪性新生物(腫瘍)つまりがんで、38万1,497人でした。死亡者全体の26.5%を占め、日本の死因の1位です。

在宅のがんの療養を支える訪問看護

がんが日本の死因の1位という点は、何十年と変わりませんが、療養の場が昔と今では変化しています。

かつては、がん患者は長期入院する場合も多かったですが、

・入院治療の期間が以前より短くなったこと
・治療に伴う副作用への対策がなされてきたこと

などの理由から最近では短期入院後退院して通院治療と在宅療養で過ごすケースが増えています。通院治療の場合、通院治療以外の時間のほとんどを在宅で療養することになります。

そして在宅でのがんの療養を支える中心的存在となるのが訪問看護です。

訪問看護は、がん患者がどのように療養生活をするのかをご本人やご家族に医療の観点から相談にのり、アドバイスしたり、連携する各職種の人たちと協力体制を取るなど、とても重要な役割を担います。

がん患者の入院と在宅の特性の違いについて

参考まで、がん患者の入院と在宅の特性の違いについてお話しします。

入院においては医療者がすぐ近くにいますし、医療機器も充実している安心感があります。ただし、入院中の生活は基本的には病院の規則を守ることが求められるため、その人らしい暮らしは難しいです。

一方、在宅療養においては、患者本人やご家族の意向に沿った治療やケアが提供され、その人らしい生活を送ることも可能となります。

しかし、ご家族の負担が大きく、常に医療者がそばにいるわけではないので不安感があるという側面もあります。

在宅療養でもほとんどの治療を受けることができます。

現在、在宅療養でも以下のような治療を受けることができます。

手術など一部の治療を除き、ほとんどは 在宅で行うことができるのです。

①点滴・注射
②酸素療法
③腹水穿刺
④痛みのコントロール 麻薬などの投与→内服・座薬・貼用剤 持続点滴・持続皮下注射など
⑤膀胱留置カテーテル(尿の管)挿入・交換
⑥その他、留置されている管類のケア 気管カニューレ・胃ろう・腸ろう・胆汁などを出す管など
⑦痰の吸引 人工呼吸器 など

訪問看護ステーションの訪問看護師は、医師の指示のもと、こうした治療における看護を行います。

がんの在宅療養における訪問看護の看護ケアのポイント

上記のように在宅で多くの治療ができるのですが、がん患者にとって医師から病状や治療法を説明されても、理解が不十分で不安になったりします。

また病気による痛みや、精神的な苦痛で不安があります。さらに治療が望めなくなった段階では大きなショックを受けて絶望的になります。

このように、苦痛や不安が多いがん患者の在宅医療養を支える訪問看護の看護ケアのポイントをまとめました。

【看護ケアのポイント①】在宅療養を理解してもらうこと

在宅療養では、医師・看護師・介護士・療法士・薬剤師など、多職種が関わることや、通院治療と並行してどのように過ごすことができるのかなどを話合って理解してもらい安心できるようにします。
 

【看護ケアのポイント②】病状の急変時のことを考えること

どのような急変が予測されるか、また急変時の対処はどうするか、緊急時の連絡体制をどうするのかを予め決めておきます。

備えることで、速やかな対応ができ、ご本人やご家族の安心にもつながります。

【看護ケアのポイント③】療養者の多方面の苦痛をやわらげる

苦痛や痛みは身体面だけではなく、不安や苛立ち、死への恐怖、経済的な悩み、家族の心配など多方面に渡ります。

看護師がすべてを解決できるわけではないので、苦痛や不安、悩みを聞いて、その分野の専門家に依頼することもあります。

【看護ケアのポイント④】副作用に適切に対処すること

抗がん剤の副作用により、悪心・嘔吐・下痢・食欲不振・味覚異常・脱毛・末梢神経障害などの症状が現れます。

副作用をアセスメントして、副作用の対策として薬を適切に用いたり、抗がん剤治療時の食事・水分の管理、その他日常生活についてアドバイスをします。

さいごに

いかがだったでしょうか。

病院と異なり、医療体制が充分ではない在宅で、がん患者が療養生活をできるだけ快適に過ごしていただくためにも訪問看護は無くてはならない存在です。

看護師にとっても病棟での経験を活かし、療養生活の準備や普段の生活の過ごし方、さらに上に書いた看護のポイントを踏まえた看護ケアを実践することは、とても学びが多くスキルアップにつながると思います。

もちろん訪問看護はがん患者の訪問看護ばかりではなく、多種多様な疾病に対応しますので、皆様の得意分野でのご経験を活かして働いてもらえればうれしいです。

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