訪問看護ステーションの運営に大きく影響する2024年の報酬改定について

こんにちは。タツミ訪問看護ステーション長津田の古藤です。

本日は、訪問看護ステーションの運営にも大きく影響する2024年の報酬改定をテーマにお伝えしたいと思います。

2年後の2024年4月に介護報酬、診療報酬、障害福祉サービス等報酬が同時に改定されるいわゆる「トリプル改定」が行われます。

医療・福祉業界の運営事業者はもとより、医療・福祉サービスを利用する方にとっても大きな改定となると予想されています。

特に訪問看護では、介護報酬(介護保険)、診療報酬(医療保険)が報酬の柱になりますので今回の「ダブル改定」の内容を気にされている方も多いと思います。

(ちなみに「ダブル改定」となるのは6年に1回、3年おきの介護と2年おきの医療の報酬改定が重なる年になります。)

改定が行われる2024年はまだ2年先(正確には1年半)のことですので、今回は、現段階で議論されている内容をもとに変更が予想されることや方向性などを整理してきたいと思います。

日本の社会保障制度とその課題について

まずは改定の根拠となる、日本の社会保障制度とその課題についてみていきます。

社会保障は、年金、医療、介護、子ども・子育てなどの分野に分けられ、国の一般会計歳出の約三分の一を占める最大の支出項目となっています。

社会保障制度の基本は保険料による支え合いとされていますが、保険料のみでは負担が現役世代に集中してしまうため税収や国債などの公債金(借金)も充てています。

多くは借金に頼っており、私たちの子や孫の世代に負担を先送りしている状況となってしまっています。

こちらが具体的な数字を表したグラフとなります。

出典元:財務省「これからの日本のために財政を考える」pdf

今後、高齢化はさらに進み、2025年にはいわゆる「団塊の世代」800万人全員が75歳以上、つまり後期高齢者となります。

75歳以上になると、1人当たりの医療や介護の費用は急増することから、持続可能な社会保障制度を作るために残された時間はわずかとも言われています。

下の表をご覧ください。

出典元:財務省「これからの日本のために財政を考える」pdf

これまでの日本の社会保障制度は医療保険制度に代表されるように「国民皆保険」でいつでも医療機関を受診でき安心した社会生活を営めるよう整備されていました。

世界の国々と比べても社会福祉がとても充実していることが日本の特徴でしたが、少子高齢化時代が到来し、総人口も徐々に減少している現在では、社会保障制度存続のための制度の変更や様々な施策が喫緊の課題となっています。

このような背景から2024年の改定は、「費用の削減」と「制度の持続」そのための「効率化」が大きなテーマとなると予想されています。

訪問看護ステーションへの影響について

訪問看護ステーションへの影響についてですが今年の4月に行われた「財務省財政制度分科会」において特に訪問看護に影響しそうな内容を5点抽出してみました。

(1)利用者の自己負担の見直し

現在は介護サービスの利用は、多くの人が自己負担は1割で、現役並みの所得がある高齢者は2割や3割の負担となっていています。

2024年の改定の論点では、要介護認定者のうち5%にとどまる「2割負担の範囲の拡大、原則化など、利用者負担の見直しを求める」内容があります。

もし2割負担が原則化となれば、30分以上60分未満の訪問看護利用で、1,825円(横浜市)がご利用者の負担となり、ご利用者様の経済的負担も大きくなります。

ちなみに厚生年金の受給額が平均14.4万円といわれているので、介護度5の厚生年金のみで生活する高齢者が限度額まで介護サービスを利用した場合、半額の7,2万円を負担することになります。

(2)ケアマネジメントの利用者負担の導入

要支援・要介護認定を受けた高齢者が介護保険サービスを利用するためにはケアプランが必要不可欠です。現在はプランを提供するケアマネジメントについては、ご利用者様の費用負担はありません。

それが2024年の改定の論点では、「ケアマネジメントへの利用者負担の導入を求める」内容があがりました。そうなると訪問看護のご利用者の経済的な負担が増えてしまいます。

(3)区分支給限度額のあり方の見直し

現在は在宅医療介護サービスの加算は支給限度額の対象外に位置付けられています。

それが2024年の改定の論点では、「加算対象のサービスを、設定された限度額の範囲内の給付として徹底すべき」との内容があがりました。

訪問看護では加算対象のサービスが多いため、ご利用者様が受けられるサービスの種類や量に影響が出ることが懸念されます。

(4)軽度者に対する給付の適正化

現在、訪問看護ステーションでは幅広いご利用者に訪問リハビリサービスを提供しています。

それが今回の改定の論点では、本来、「通院が困難なご利用者」に対して訪問リハビリテーションをおこなうべきであるが、
実態が異なっているため、「独歩で介助者の助けを借りずに通院できるご利用者には算定できないといった要件をより明確化」する内容がありました。

そうなると、訪問看護ステーションからの訪問リハビリサービスの対象者や頻度が制限されるかもしれません。

(5)経営の大規模化・協働化の必要性

近年、訪問看護ステーションは、事業所数が大幅に増加しました。数は増えたもののスタッフ数やご利用者が少なく小規模で運営しているステーションもたくさんあります。

今回の改定の論点では、新型コロナウィルスの流行の下で、医療と介護のニーズの複合化による課題が顕在化していることを引き合いに「医療と介護サービスの提供体制を俯瞰して、経営の大規模化・協働化を図る必要があると考えます」との内容があります。

この考えが具体的に制度化された場合、訪問看護ステーションの吸収合併の増加、小規模ステーションの運営が厳しくなるなどご利用者様にさまざまな影響が出るたりする可能性が出てきます。

まとめ

団塊の世代が後期高齢者となる2025年を目前に控えた2024年改定では社会保障制度を維持していくための様々論点が議論されています。

特に改定の大きな論点が「費用の削減」と「制度の持続」そのための「効率化」になっていますので介護・医療の2種の報酬が適用される訪問看護ステーションも改定に合わせて変化していくことが求められます。

2024年以降も地域で必要とされる存在であり続けるためには、サービスの質を上げながら、できる限り無駄なく効率的に運営を行うことが重要になります。

今病院勤務で、訪問看護に関心がある看護師には、2024年の活躍を目指し、地域で必要とされる訪問看護ステーションをじっくり学びながら一緒に作っていければうれしいです。

Follow me!