「認知症」における訪問看護の介入と効果について(前篇)

こんにちは。タツミ訪問看護ステーション長津田の古藤です。

今回は、訪問看護において非常に関わりが深い「認知症」について2回にわけてお伝えしたいと思います。

第1回目は、「認知症」についてその背景と種類についてお伝えしていきます。

増え続ける認知症、高齢者5人に1人が認知症に

総務省統計局から発表される日本の高齢者人口によると、2021年9月現在の高齢者人口は3,640万人となりました。

人口における高齢者の割合は、1985年は10%でしたが2005年に20%を超え、2021年29.1%と増加の一途をたどっています。

認知症の発症の最大因子は加齢と言われていますが、下の図にあるように、2012年は認知症高齢者数が462万人と、65歳以上の高齢者の約7人に1人(15.0%)でしたが、2025年には約5人に1人で20%が認知症になるという推計もあります。

当然、在宅療養者の認知症も急増していきますので、今後は、医療と生活の観点からケアができる訪問看護の支えがますます重要になってきます。

出典元:【厚生労働省】高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向(3)認知症高齢者数の推計
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/gaiyou/s1_2_3.html

3つの代表的な認知症について

一口に「認知症」といってもその原因となる疾患によりいくつかに種類に分かれます。

今回は、認知症の原因となる病気の半分以上を占める“アルツハイマー型認知症”と“血管性認知症”、“レビー小体型認知症”の3つの代表的な認知症について解説していきます。

① <アルツハイマー型認知症とは>

認知症の中でもっとも割合が多く、全体の70%近くを占めます。

脳の神経細胞にアミロイドβというたんぱく質がたまり、それが神経細胞を破壊し脳が委縮することで発症します。

アミロイドβが蓄積される原因については、加齢や遺伝が影響するとされているものの明確なことは分かっていません。

しかし近年、糖尿病や高血圧の人はアルツハイマー型認知症になりやすいことが明らかとなりました。 

アルツハイマー型認知症の初期は、物忘れのような症状に始まり、昼食を摂ったこも記憶にない等「行動そのものを覚えていない」ようになります。

近い時期の記憶からだんだん失われていって、進行すると徘徊、失禁、性格の変化等が現われ、日常生活を送るにあたって全般的なサポートが必要となります。

②<血管性認知症とは>

アルツハイマー型認知症に次いで多く、認知症全体の約20%を占めるのが血管性認知症です。

血管性認知症は、高血圧、脂質異常症、糖尿病等の生活習慣病が原因でおこる脳梗塞や脳出血等の脳血管障害によって脳の血液の流れが阻害され、脳の一部が壊死することで発症します。

脳血管性認知症の症状は障害を起こした脳の部位によって異なります。

具体的には歩行障害、手足のしびれ、麻痺、排尿障害、言葉が出にくい、意欲低下、不眠、感情のコントロールがきかない等の症状があり、血管障害の発作が起こるたびに症状が段階的に重くなっていきます。

そのためリハビリテーションや生活習慣の改善によって再発作を防ぐことが重要で、症状の進行を遅らせることにつながります。

③<レビー小体型認知症とは>

レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症、血管性認知症に次いで多い認知症です。

レビー小体という神経細胞にできる特殊なたんぱく質が脳にたまり、神経細胞を破壊することで発症します。

特殊なたんぱく質が脳にたまる原因は、いまだ解明されていません。

レビー小体型認知症では手足の震え、身体のこわばり、歩行障害等があり、転倒しやすくなるため注意が必要です。

また幻視、うつ症状、睡眠時の異常行動なども見られます。

記憶力や判断力といった認知機能の障害は変動しやすく、頭がはっきりしている時とぼーっとしている時を繰り返しながら進行します。

気分や態度、行動がころころ変わるのもレビー小体型認知症の特徴です。

■認知症の症状

次に、認知症の主な症状についてお話しします。

認知症の症状とは、脳の働きの低下が原因となって引き起こされるさまざまな症状のことです。

その症状には、記憶障害を中心とした認知症の方に必ず見られる「中核症状」と、環境や体験、気質によってあらわれる「周辺症状(行動・心理症状、BPSD)」があります。

「中核症状」とは

中核症状とは、脳の神経細胞の破壊によって起こる症状で、代表的な症状はひどい物忘れ(記憶障害)です。

直前に起きたことを忘れるようになり、古い記憶も症状の進行ととも失われることが多いようです。

また、段取りや筋道を立てた行動、思考ができなくなる判断力の低下、時間や場所・名前などが分からなくなる(見当識障害)などがあります。

「周辺症状」とは

「周辺症状(行動・心理症状:BPSD)」とは周辺症状(行動・心理症状:BPSD)は、脳の障害により生じる精神症状や行動の異常をいいます。

具体的には、妄想、抑うつや不安などの精神症状と、徘徊、興奮、攻撃、暴力などの行動の異常が見られます。

周辺症状(行動・心理症状:BPSD)は、脳の障害を背景に、その人の性格や環境、人間関係などが絡み合って起きるものです。
そのため、症状は人それぞれ異なり、また接する人や日時によっても大きく変わってきます。

「認知症」における訪問看護の介入について

このように様々な症状をもつ「認知症」において訪問看護では、定期的にアセスメントして症状を把握し、適切に介入します。

軽度の時から関わることで重度化を予防し、住み慣れた地域でその人らしく暮らしていけることをサポートします。

次回は、訪問看護の介入と効果についてお話していきます。

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