「認知症」における訪問看護の介入と効果について(後編)

こんにちは。タツミ訪問看護ステーション長津田の古藤です。

今回は、前回に引き続き、訪問看護において非常に関わりが深い「認知症」についてお伝えしたいと思います。

第2回目は、「認知症」における訪問看護の介入と効果についてついてお伝えしていきます。

認知症のご利用者様への訪問看護介入による効果

認知症のご利用者様に訪問看護が介入することで以下のような効果を出すことが確認されています。(こちらは令和2年度老人保健健康増進等事業の調査研究を参考にしています)

【1】「身体疾患が発見されること」

認知症は、脳そのものが障害される疾患ばかりではなく、脳以外の身体疾患によっても引き起こされることがあります。

例えば、頭部外傷、慢性硬膜下血腫悪性腫瘍、癌性髄膜炎などが原因となることもあります。

訪問看護の介入によって医師との連携で、こうした身体疾患が発見される効果があります。

【2】「服薬が上手く管理できること」

認知症の方には、認知症に対して処方される薬以外にも、内科薬など何種類かの薬を同時に服用するケースが多いですが、ご自身で薬の服用管理ができなくなることも多々あります。

そのため、内服薬を忘れずに服用できているのかの確認をしたり、忘れないように工夫をすることは、訪問看護の大事な仕事となります。

例えば糖尿病などの薬も服用されている方は、服用できないと、身体疾患の病状にも影響します。

ご家族と同居されている方は、ご家族に薬の管理を依頼することもありますがお一人暮らしの場合、訪問ごとに薬をお渡しして飲んでもらったり、訪問がない日は薬を日にちごとに分かりやすくボックスなどに分けてセットしておきます。

また、別時間に訪問するヘルパーさんに内服の声かけをお願いするなど、いろいろな工夫を行います。

処方薬の種類や数が多い場合には、通院先の病院に複数ある薬を飲みやすく一包化するなど依頼することも、飲み忘れを防ぐ方法でもあります。

このように訪問看護師が介入することで、正しい服薬ができる効果があります。

【3】「疲れているご家族を支援し、負担を軽減すること」

認知症の在宅ケアでは24時間365日対応しているご家族の心労は図り知れません。

先の見えない介護に疲れて体を崩したり、時には虐待を起こすことがあります。

訪問看護師がご家族に対して、トラブル時の対処法を示したり、
デイサービスの利用を進めるなど、休まる時間を考えたり、ご家族に寄り添った支援をすることで、不安を少しでも解消することができます。

訪問看護師が介入することでご家族の疲労や負担を軽減できる効果があります。

【4】「利用していなかったサービスを導入すること」

訪問看護では、認知症のご利用者様の状態を把握した上で、これまで利用していなかったサービスの導入を促すこともあります。

例えば、認知症対応型デイサービスやリハビリサービスは、介護保険で利用でき、認知機能をできる限り維持して認知症の進行を遅らせるために役立つサービスです。

認知症対応型デイサービスへの通所や、リハビリによる機能強化は、ご利用者様の生活の質を高めるだけでなく、介護者の負担軽減効果も期待できます。

訪問看護師が介入することで、利用サービスの幅を広げる効果があります。

【5】「住まいを整備することによって在宅生活が継続できること」

認知症では判断力の低下、身体機能の低下などから自宅で事故がおこりやすくなります。

転んだり、ベットから落ちたりする「転倒・転落」、食べ物以外のものを食べる「異食」、うまく飲み込めずむせこむ「誤嚥・誤飲」、食べ物が喉につまる「窒息」、何かを捜し歩いて家に帰れなくなる「徘徊」、火をつけたまま忘れる「火の不始末」などの事故が代表的です。

自宅での事故を防ぐには、危険な場所・場面をどれだけ減らすことができるかが重要になります。

手すり、マットで転倒・転落を防止したり、食卓の上に食べ物以外のものを置かないことで異食を防いだり、衣服に連絡先を書いて徘徊に備えるなど、常に事故のリスクがあると考え、できるかぎり安全な環境を整えるお手伝いも訪問看護の仕事のひとつです。

また、住宅の構造上の部分については、福祉用具のレンタルや住宅改修工事で軽減可能です。

福祉用具のレンタルも住宅改修工事も介護保険が使えるので、訪問看護師がアドバイスすることもあります。

さいごに


このように、認知症になっても住み慣れた地域でできるだけ長く、自分らしく暮らし続けられるためにも訪問看護の介入はとても重要な役割を持ちます。

今後も増加していくと見込まれ、高齢者の5人に一人が認知症になることが推定されていますので、これからは、認知症になっても成立する社会をつくることが重要となると思います。

訪問看護は、こうした地域社会つくりの一助となります。

大げさかもしれませんが、訪問看護は地域社会を豊かにする仕事だと信じています。

興味のある看護師さんには、このようにすばらしい訪問看護を体験、実感してもらえるとうれしいです。

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