訪問看護の加算制度【前編】介護保険の加算について

こんにちは。タツミ訪問看護ステーション長津田の古藤です。

本日は訪問看護に関わる加算制度についてお話したいと思います。

団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年以降、日本の医療や介護の需要はさらに増え続けます。

増加の一途をたどる医療費の支出を抑え、多くの方が望まれる「住み慣れた場所で最期まで」を叶えるべく国は医療を提供する現場を、「病院から在宅へ」へ舵をきり、在宅医療サービスの充実に力を入れています。

今回のテーマである加算制度とは、在宅医療サービスの充実の一環として、退院支援、難病や重度者の受け入れ、急変時の対応、看取り、熟練者の人員配置といった付加価値が高い訪問看護ステーションに、それぞれの加算に定められる算定要件を満たすことで、基本の保険報酬にプラスして算定できる報酬制度です。

国が定める加算の算定要件を満たし、質の高いサービスを提供できる訪問看護ステーションは、国や地域、そしてご利用者やご家族の多様なニーズに対応できる事業所として発展しています。

加算制度の内容はイコール、在宅医療サービスのニーズの内容ともいえます。

これから訪問看護を目指す看護師にとっても、加算制度の内容を知ることは、在宅医療サービスのニーズのポイントを知る機会になると考えています。

訪問看護の加算制度には、基本の保険報酬と同様に介護保険報酬と医療保険報酬があり、それぞれに、種類/単位や料金/対象者/要件が設定されています。

また訪問看護の加算の頻度は、1日あたり/1ヶ月ごと/1回の利用ごとなど加算の種類によって変わります。

本日は訪問看護の加算制度の前編として介護保険の加算についてお伝えいたします。

訪問看護の加算制度にはどのような種類があるのか【前編:介護保険編】

最初に介護保険の訪問看護サービス提供における9種類の加算制度の「名称」「単位」「頻度」「内容や要件」について説明します。

(ちなみに介護保険では、1単位は、10円~11.4円で料金を算出します。※1単位の料金は地域により変動します。)

(1)加算の名称【初回加算】 

「単位」 300単位
「頻度」 月1回

<内容や要件>

次に該当し、新たに訪問看護計画書を作成する時に加算できます。

・事業所にとって新規のご利用で訪問看護サービス提供を行う場合
・要支援から要介護、要介護から要支援に変更となった場合
・2ヶ月間訪問の間が空いた時

(2)加算の名称【緊急時訪問看護加算】

「単位」 574単位
「頻度」 月1回

<内容や要件>

利用者の同意を得て、利用者又はその家族等に対して、「24時間連絡できる体制」であり、かつ「計画的に訪問することとなっていない緊急時訪問を必要に応じて行う体制にある場合」に算定できます。

加算が創設された背景には、「訪問看護による24時間の看護体制」への利用者のニーズの高まりがあり、緊急時にも対応できる体制を取っている訪問看護事業所を評価する目的があります。

緊急時訪問看護加算を算定するには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

1.利用者やその家族等から電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制にあることを届け出していること

2.計画的に訪問することとなっていない緊急時訪問を必要に応じて行う体制にあること

3.利用者に対して利用者やその家族に緊急時訪問看護加算の算定について書面で説明し、同意を得ていること

※要件を満たしている場合、月の第1回目に介護保険で訪問を行った日に、訪問看護の単位数に加えて緊急時訪問看護加算を算定できます。

(3)加算の名称【長時間訪問看護加算】

「単位」 300単位
「頻度」 1日1回

<内容や要件>

特別管理加算の対象になる利用者に対して、1時間以上1時間30分未満の訪問看護を行った後に引き続き訪問看護を行った場合に算定できます。

長時間訪問看護加算は、支給限度額に含まれる加算になります。

(4)加算の名称【複数名訪問加算】

<内容や要件>

複数名訪問加算とは、1人で看護を行うことが困難な利用者に対して、看護師等が2名または看護師等1名と看護補助者1名で訪問看護を行うことを評価する加算です。

以下のいずれかに該当する利用者

• 身体的理由により1人の看護師等による訪問看護が困難と認められる

• 暴力行為、著しい迷惑行為、器物破損行為等が認められる

• その他利用者の状況等から判断して、上記に準ずると認められる

• 利用者やその家族から複数名で訪問を行うことの同意を得ていること

※複数名訪問加算は、(Ⅰ)と(Ⅱ)が設定されていて、訪問時間や訪問する人の資格によって単位が異なります。

■複数名訪問加算(Ⅰ)

同時に2人の看護師等による訪問であること

「単位/頻度」 30分未満の場合 254単位/1回  30分以上の場合 402単位/1回

■複数名訪問加算(Ⅱ)

同時に1人の看護師等と1人の看護補助者による訪問であること

「単位/頻度」 30分未満の場合 201単位/1回  30分以上の場合 317単位/1回

(5)加算の名称【退院時共同指導加算】

「単位と頻度」 600単位/回

<内容や要件>

病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院から退院・退所するご利用者が退院・退所後に円滑に訪問看護を提供できるように、入院中に訪問看護ステーション等の看護師等が医療機関と共同して、在宅での療養上必要な指導を行うことを評価する加算です。

令和3年度介護報酬改定では、退院時共同指導加算の算定要件について、新型コロナウイルス感染症対策やICT活用の観点から、テレビ電話等の活用が認められるようになりました。

退院時共同指導の内容を文書によって提供することや退院・退所後に訪問看護サービスを行うことも要件となります。

(6)加算の名称【ターミナルケア加算】

「単位」 2,000単位
「頻度」 1回

<内容や要件>

訪問看護ではご利用者の尊厳を維持し、その人らしく最期を迎えられるような療養上の支援をします。

「ターミナルケア加算」ではそうしたケアを行う体制を構築していることと実際の取り組み(実績)の両面で評価します。

在宅で死亡した利用者に、その死亡日及び死亡日前14日以内に2日以上ターミナルケアを行った場合(ターミナルケアを行った後、24時間以内に在宅以外で死亡した場合を含む)、算定することができます。

(7)加算の名称【特別管理加算】

<内容や要件>

特別な管理を必要とする利用者に対して計画的な管理を行うことで算定できる加算です。

特別管理加算(Ⅰ)と(Ⅱ)が設定されていて、対象者や単位が異なります。

■特別管理加算(Ⅰ)の対象者

以下のいずれかに該当するご利用者

• 在宅悪性腫瘍等患者指導管理
• 在宅気管切開患者指導管理
• 気管カニューレの使用
• 留置カテーテルの使用
「単位/頻度」 500単位/月 

■特別管理加算(Ⅱ)の対象者

以下のいずれかに該当するご利用者

• 在宅自己腹膜灌流指導管理
• 在宅血液透析指導管理
• 在宅酸素療法指導管理
• 在宅中心静脈栄養法指導管理
• 在宅成分栄養経管栄養法指導管理
• 在宅自己導尿指導管理
• 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理
• 在宅自己疼痛管理指導管理
• 在宅肺高血圧症患者指導管理
• 人工肛門、人工膀胱の設置
• 真皮を越える褥瘡
• 週3日以上の点滴注射
「単位/頻度」 250単位/月

(8)加算の名称【看護体制加算】

<内容や要件>

医療ニーズの高い利用者へ対応する体制を整備していることが評価されて加算されます。従業者の総数のうち看護職員の占める割合が60%以上であること必要です。

看護体制加算は(Ⅰ)と(Ⅱ)が設定されていて、算定要件によって単位が異なります。

■訪問看護の看護体制強化加算(Ⅰ)に算定要件

• 算定日が属する月の前6月間において、利用者の総数のうち、緊急時訪問看護加算を算定した利用者の割合が50%以上であること
• 算定日が属する月の前6月間において、利用者の総数のうち、特別管理加算を算定した利用者の割合が20%以上であること
• 算定日が属する月の前12月間において、ターミナルケア加算を算定した利用者が「5人以上」であること
「単位/頻度」 550単位/月

■訪問看護の看護体制強化加算(Ⅱ)の算定要件

• 算定日が属する月の前6月間において、利用者の総数のうち、緊急時訪問看護加算を算定した利用者の割合が50%以上であること
• 算定日が属する月の前6月間において、利用者の総数のうち、特別管理加算を算定した利用者の割合が20%以上であること
• 算定日が属する月の前12月間において、ターミナルケア加算を算定した利用者が「1人以上」であること
「単位/頻度」 200単位/月

(9)加算の名称【サービス提供体制強化加算】

<内容や要件>

訪問看護ステーション等が提供するサービスの質を上げるための取り組みを行っていることが評価されて加算されます。

具体的には、下記内容や要件となります。

• すべての看護師等に対して、個別の研修計画を作成し、計画に沿った研修を実施していること
• 利用者に関する情報の伝達、サービス提供の留意事項の伝達、看護師等の技術指導を目的とした会議をおおむね1ヵ月に1回以上開催し、開催状況の概要を記録していること
• すべての看護師等に対して、事業主が費用を負担して、少なくても1年に1回以上健康診断等を実施していること

サービス提供体制強化加算は(Ⅰ)(Ⅱ)が設定されていて、総数のうち3割を占める看護師の勤続年数によって単位が異なります。

■サービス提供体制強化加算(Ⅰ)の算定要件

• 看護師等の総数のうち、勤続年数7年以上の者の占める割合が30%以上であること

「単位/頻度」6単位/回

■サービス提供体制強化加算(Ⅱ)の算定要件

• 看護師等の総数のうち、勤続年数3年以上の者の占める割合が30%以上であること
「単位/頻度」3単位/回

さいごに

いかがでしたでしょうか。

訪問看護を目指す志のある看護師と共に、加算についても理解してもらいながら、これからも付加価値が高い訪問看護ステーションとして成長させていければうれしいです。

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