訪問看護で利用される割合が大きい「公的介護保険」について

こんにちは。タツミ訪問看護ステーション長津田の古藤です。

訪問看護は、在宅療養をおこなう赤ちゃんからお年寄りまでのすべての方が対象となり、状況に応じて、公的介護保険と公的医療保険が適用されます。

要介護や要支援の認定を受けている場合、基本的に公的介護保険が優先されます。それ以外の場合は、基本的に公的医療保険を利用することになります。

本日は、訪問看護で利用される割合が大きい「公的介護保険」をテーマにお話ししたいと思います。

介護保険制度のあらまし

まず、介護保険制度ができた背景や基本的な考えなどあらましについてお話しします。

ひと昔前は、介護が必要となった親の介護は、子どもや家族が行うことが普通でした。

しかし高齢化社会の進展により介護を必要とする高齢者の増加や、核家族化の進行、介護離職などの課題などが大きくなるにつれ、家族の負担を軽減し介護を社会全体で支える仕組みが強く求められるようになりました。

これを踏まえて2000年に、介護を社会全体で支えることを目的に、創設されたのが介護保険制度です。

介護保険制度の「基本的な考え方」としては、以下の3つとなっています。

① 自立支援

単に介護を要する高齢者の身の回りの世話をするということを超えて、高齢者の自立を支援することを理念とする。

② 利用者本位

利用者の選択により、多様な主体から保健医療サービス、 福祉サービスを総合的に受けられる制度。

③ 社会保険方式

給付と負担の関係が明確な社会保険方式を採用。

そして創設から22年経った現在では約690万人の方が介護保険を利用できる要介護・要支援認定者となり、介護を必要とする高齢者を支える制度として定着しています。

何歳から介護保険料が徴収されるのか

介護保険制度の前提として40歳から64歳の方については、自身も老化に起因する疾病により介護が必要となる可能性が高くなることや、親が高齢となり、介護が必要となる状態になる可能性が高まる時期であることから、40歳以上の方から介護保険料が徴収されることとなりました。

どのような方が介護保険を使えるのか

介護保険の被保険者は、65歳以上の方を第1号被保険者といい、原因を問わずに要介護・要支援認定を受けたときに介護保険を使って介護サービスを受けることができます。

また、40歳から64歳の方を第2号被保険者といい、加齢に伴う特定の疾病が原因で要介護・要支援認定を受けたときに介護保険を使って介護サービスを受けることができます。

介護保険制度の仕組みについて

続いて、介護保険制度の仕組みについて解説します。

介護保険制度は、次の図にようになっています。

出典元:厚生労働省「介護保険制度をめぐる最近の動向について」pdf

図にあるように、介護保険財源の構成は「①税金」と「②保険料」で50%ずつになています。

「①税金」は国25%、都道府県12.5%、市町村12.5%となっています。

訪問看護ステーションの介護保険サービス利用分の費用の9割 (8割 ・7割)がこの介護保険財源からステーションに支払われます。

実際には、国保連(国民健康保険団体連合会)が委託を受けて一括して訪問看護ステーションなどの介護保険事業所から請求された内容を確認して支払うため、財源の分担率など細かいことを知っている人は少ないですし、実際はそこまで覚える必要はないと思います。

これまでの21年間の介護保険利用者の増加状況

次にこれまでの21年間の介護保険利用者の増加状況を見ていきます。

以下の表をご覧ください。

出典元:厚生労働省「介護保険制度をめぐる最近の動向について」pdf

介護保険制度の制度創設から21年が経過した2021年時点で、65歳以上被保険者数が約1.7倍に増加し、サービス利用者数は約3.4倍に増加しました。

また、表にあるように、訪問看護含む、在宅サービス利用者数 97万人 ⇒ 399万人 4.1倍と凄い勢いで増加していることがわかります。

今後の介護保険をとりまく状況

過去21年間で、介護保険の利用状況は増加し続けました。
それでは今後はどうなるのでしょうか。

下記の表にあるように、65歳以上の高齢者数は、2025年には3,677万人となり、2042年にはピークを迎えると予測(3,935万人)されています。

また、75歳以上高齢者の全人口に占める割合は増加していき、2055年には、25%を超える見込みです。

出典元:厚生労働省「介護保険制度をめぐる最近の動向について」pdf

では、高齢者の年齢階級が上がってくるとどうなるのでしょうか。

次のグラフは、年齢階級の人口1人当たりの介護給付費用を表したものです。

出典元:厚生労働省「介護保険制度をめぐる最近の動向について」pdf

これをみると、80~84歳の介護保険給付額が33.1万円/年に対し、85~89歳では71.3万円/年となり、一人当たり介護給付費は85歳以上の年齢階級で急増していることがわかります。

さらに90~95歳では143.6万円/年に達しています。

そして95歳を超えると、なんと202万円/年になります。
(財務省 社会保障資料)

近年は、人生100年時代といわれています。高齢者の年齢階級が上がるわが国では、今後一層の介護保険の支出が増えていくことになります。

介護保険での訪問看護の利用の伸び

次に、介護保険内で提供されるサービスの中で、訪問看護の増加の状況について下記の表をご覧ください。

2020年度から2040年度の各介護保険サービスのサービス量の見込みを表しています。

訪問看護は、2020年からわずか5年の2025年で、利用者が61万人から71万人へと10万人も増える見込みです。

出典元:厚生労働省「介護保険制度をめぐる最近の動向について」pdf

さいごに

介護保険制度はなくてはならない素晴らしい制度です。

そして訪問看護には、介護保険を活用しながら、医療と介護の視点から他の介護保険事業所と情報共有や連携して生活の質の向上を目指す役割があります。

私たち訪問看護師も微力ながら、介護保険制度を将来に渡って持続可能にするために貢献できることがたくさんあると思います。

ありがたいことに、最近では、訪問看護に転職する看護師や、訪問看護を目指す看護師は増えています。

病棟の看護師にとって介護保険は少し縁遠い制度ですが、訪問看護では、介護保険制度についての知識が必要になりますので、今回お話しした内容が訪問看護を目指す看護師にとっての一助となればと思っています。

ご一緒に勉強しながら貢献できることを増やしていきたいと思っている、やる気のある看護師の問い合わせや応募をお待ちしています。

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